既に別記事ご報告しておりますとおり、2026年5月30日、ウインクあいちにて「医療事故情報センター総会記念シンポジウム 医療事故調査制度の今後の展望-医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会を踏まえて-」が開催されました。今回の記事では、当日の様子をより詳細にご報告いたします。
第1部では、まず、私の方から、基調報告として、昨年実施された厚労省における検討会の内容と、これを踏まえた現在の医療安全施策の状況についてご報告させていただきました。その際に報告した具体的な内容はこちらをご覧ください。
また、各パネリストの皆様からも、今後の医療事故調査制度がいかなる方向で進展していくべきかについてご報告いただきました。
まずは、医療安全の現場に携わる医療従事者の視点から、長尾能雅さん(名古屋大学医学部付属病院患者安全推進部・教授)にご報告いただきました。長尾さんからは、患者安全において重要なのは、平時と有事のダブルループの枠組みを回し、回避可能なインシデントを確実に回避する体制を構築すること、これらの枠組みを回すなかでは医療従事者以外の立場(例えば弁護士など)の参画が必要であることなどが報告されました。
次に、患者側の視点から、宮脇正和さん(医療過誤原告の会・会長)にご報告いただきました。宮脇さんからは、医療事故調査制度が遺族を置き去りにした制度運用となっているのではないかという課題を示し、今回の医療安全施策の改正には一定の評価をしたうえで、未だ発展途上の制度であり、さらなる改善が必要であると報告いただきました。
さらに、報道関係者の視点から、清水健二さん(毎日新聞論説委員)にご報告いただきました。清水さんからは、医療事故調査制度を正しく運用していくうえでは、患者が医療安全管理体制に参画することの重要性や、事故報告数の公表を制度化することで、ユーザーである患者に当該医療機関を利用する判断材料として委ねてはどうかといった提案などがなされました。
最後に、学者の視点から、畑中綾子さん(尚美学園大学・准教授)にご報告いただきました。畑中さんからは、医療事故としての不報告事例を調査した結果の報告や、その調査アンケートの中で、医療従事者側から、患者も医療事故を報告するシステムがあった方がよいのではないかといった意見があったことが紹介されました。
第2部では、会場からの質問・意見なども交えて、医療事故調査制度のあるべき制度設計に関して、さまざまな議論が交わされました。その中でも印象的であったのは、患者が医療安全管理体制の中に参画する重要性が示されたことや、名古屋大学医学部付属病院では、患者からのインシデント報告を受け付けることができる先駆的な仕組みを検討しているなどといった点が印象的でした。
個人的に今回のシンポジウムのテーマを一言でまとめるとすれば、それは「患者参画」に尽きると言っていいほどに、患者が医療安全管理体制へ参画することの重要性や意義をより強く意識づけられたシンポジウムでした。殊に、専門性が高く後見的な役割も重視されてきた医療という領域ではありますが、昨今の情報化社会の流れや、AIなどの利用により容易に一定程度の知識へアクセスすることができるようになり、時代が大きく変動しつつある昨今、医療安全という領域に患者が参画することの是非という点は、議論の俎上にのせるときが来ているのではないかと思われるところです。こうした重要な視点を提供することができた本シンポジウムは大変有意義なものであったと思います。ご登壇いただいたパネリストの皆様はじめ、シンポジウムにご出席いただいた皆様に改めて御礼を申し上げます。