最近、ニュースなどでも「行政のデジタル化」や「ペーパーレス化」といった言葉をよく耳にするかと思いますが、実は裁判所でもIT化に向けた改革が着々と進められています。
今回は、裁判所のIT化「フェーズ3」に伴い、私も実際にオンラインでの電子申立て(mints)を経験しましたので、その所感や実務的な影響についてお話ししたいと思います。
裁判所のIT化「フェーズ3」とは?
そもそも「裁判所のIT化って?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。これまで、裁判といえば分厚い紙の束を裁判所に提出するというアナログなイメージが強かったと思います。しかし、裁判所も現在、以下の3つの段階(フェーズ)に分けてデジタル化を進めています。
-
フェーズ1(事実上のウェブ会議): 改正前の民事訴訟法の下でのウェブ会議・テレビ会議等の実施。
-
フェーズ2(新法制化でのウェブ弁論): 新法に基づく弁論・争点整理等の運用。
-
フェーズ3(電子申立て等の開始): これまで紙で提出することが義務付けられていた「訴えの提起(提訴)」そのものや、その他の各種申立てについても、オンラインで完結できるよう。
つまり、フェーズ3によって、「裁判の入り口から出口まで、すべてデジタルで完結できる基盤」が整ったことになります。
全てが電子データに!初めての電子申立てを経験して
先日、私もこのフェーズ3の制度を利用し、実際に1件の訴訟提起等の申立てを電子システム(mints)経由で行いました。
これまでであれば、訴状や大量の証拠書類を印刷し、正本・副本を作成してホッチキスで留め、裁判所の窓口へ持参するか郵送する必要がありました。しかし今回の電子申立てでは、これまで紙媒体でやり取りしていたものが「すべて電子データ(PDF等)でのやり取り」へと切り替わりました。
画面上でデータをアップロードし、送信ボタンを押すだけで申立てが完了するというのは、これまでの実務の感覚からすると非常に大きな変化です。
デジタル化による事務負担の軽減と、今後の課題
実際に電子申立てを経験してみて感じた最大のメリットは、やはり事務的な負担の大幅な軽減です。 印刷の手間、郵送や持ち込みにかかる時間の問題から解放されることは、弁護士や事務局にとって非常に有意義だと感じました。また、データで管理されるため、過去の記録へのアクセスも容易になります。
一方で、実際に運用してみて戸惑った点や課題もいくつか見えてきました。 最も気になったのは、提出するデータの形式(フォーマットやファイルサイズなど)に細かな制限がある点です。システム上、決められたルールに沿ってデータを整えなければエラーになってしまうため、紙であればそのまま提出できたものでも、データ化の際に事前の加工や調整が必要になるケースがありました。
おわりに
裁判所のIT化はまだ過渡期であり、システムを使いこなすためのノウハウや、運用ルールの改善など、実務を担う我々にとっても裁判所にとっても、乗り越えるべき課題は残されています。
名古屋地方裁判所においては、現行のシステム(mints)は今年12月いっぱいで、来年1月からは新たなシステム(trees)導入されることになっています。今年5月にmintsによるフェーズ3が開始され、約数か月間で新たなシステムに移行することになるのは、なんとも翻弄されている感が否めませんが、対応しないわけにはいきません。
新たなシステムでは、上記で見えてきた課題が克服され、使いやすいシステムとなるよう願っています。